公開: 2026年7月12日(記載の税制情報は2026年7月12日に国税庁タックスアンサー〈令和7年4月1日現在法令等〉で確認)

「ガソリン代はどこまで経費?」「昼メシは? 駐車違反の反則金は?」——軽貨物(貨物軽自動車運送事業)を始めて最初の確定申告で、ほぼ全員がぶつかる疑問です。この記事では、国税庁の一次資料(タックスアンサー)だけを根拠に、経費の判断基準・軽貨物でよく出る費目・経費にならない支出を整理します。

先に結論
  • 経費に「収入の何%まで」という上限の決まりはありません。基準は金額でなく「仕事のために必要だったと説明できるか」
  • 車・スマホなど仕事とプライベート兼用の支出は、仕事の分を根拠つきで区分(家事按分)できれば、その分だけ経費にできます
  • 反則金・罰金、所得税・住民税は経費になりません。国民年金・国保は経費ではなく社会保険料控除(記入場所が違うだけで全額引けます)
  • 経費の主張は証拠が命。レシート+走行記録(日報)をセットで残すのが軽貨物の基本です

経費の大原則 — 「何%まで」ではなく「説明できるか」

必要経費について、国税庁のタックスアンサーNo.2210「やさしい必要経費の知識」(令和7年4月1日現在法令等・確認日2026-07-12)は、必要経費に算入できる金額を次のように定めています。

かみくだくと「その支出は、配送の仕事のために必要だったか?」がすべてです。「収入の◯%までなら大丈夫」といった上限ルールはどこにもありません。逆に言えば、割合が小さくても仕事に関係ない支出は経費にできず、金額が大きくても仕事に必要と説明できるなら経費になり得ます。

迷ったときは、次の2つの質問にかけてみてください。

  1. この支出は、配送の仕事のためだと(他人に)説明できるか? — 説明に詰まるなら、それはたぶん生活費です
  2. プライベートと混ざっているなら、仕事の分を根拠つきで区分できるか? — 区分の方法は後述の家事按分へ

軽貨物でよく出る費目一覧

軽貨物の仕事でよく出る支出を、収支内訳書・青色申告決算書に書くときの科目例とあわせて一覧にします。どの費目も「仕事で使った分」が前提で、品目名だけで経費と決まるわけではない点に注意してください。

支出科目例ポイント(条件)
ガソリン代・軽油代車両費(または旅費交通費)事業専用車なら全額が経費になり得る。兼用車は按分(後述)
車検・法定点検車両費事業用車の分。兼用車は按分の対象
修理・オイル交換・タイヤ修繕費(または車両費)同上
自動車保険(自賠責・任意)損害保険料事業用車にかけたもの。兼用車は按分の対象
軽自動車税・自動車重量税租税公課事業用車の分。兼用車は按分の対象
高速道路・有料道路料金旅費交通費配送業務での利用分。ETC明細を保存
配達中のコインパーキング旅費交通費業務中の駐車分(反則金は不可・後述)
事業用車の月極駐車場地代家賃事業用車の保管場所の分
作業着・安全靴・軍手消耗品費仕事専用に使うもの。普段着と兼用の服は説明が難しい
台車・段ボール・緩衝材消耗品費業務で使う資材・道具
スマホ本体・通信費通信費プライベート兼用なら按分(後述)
車載ホルダー・ドラレコ等消耗品費10万円未満なら購入年の経費にできる(10万円以上は減価償却)
委託元に支払う手数料支払手数料報酬から天引きされる場合も支払明細で確認して計上
事業に関する書籍・セミナー新聞図書費など業務との関連を説明できるもの

※科目名の付け方に細かい法律上の決まりはありません(一度決めたら毎年同じ科目を使うのが集計のコツ)。車両の購入代金・ローン返済は「買った年に全額経費」にはならず、減価償却という別ルールで処理します。個々の支出が経費に当たるかの最終判断は税務署・税理士にご確認ください。

兼用の支出は「家事按分」— 何%と決めるのは自分の記録

車・スマホ・自宅のように仕事と生活の両方に関わる支出を、税金の世界では家事関連費と呼びます。No.2210によれば、家事関連費のうち必要経費にできるのは、「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限られます。

ここで大事なのは、「車は◯%までOK」という相場・上限は法令に存在しないことです。正解は割合の数字ではなく「その割合をどう計算したか」。たとえば車なら、こんな計算になります(架空の例)。

  1. 1年間の総走行距離をメーターで確認 → 20,000km
  2. 日報の記録から業務での走行距離を集計 → 16,000km
  3. 事業割合 = 16,000km ÷ 20,000km = 80%
  4. 年間のガソリン代が240,000円なら → 240,000円 × 80% = 192,000円を経費に計上。車検代や任意保険料にも同じ割合を使う

スマホなら稼働日数、自宅で事務作業をするなら業務に使う面積が、按分の基準の候補になります。いずれの場合も、割合を決めた時点で計算根拠をメモに残すこと。数年後に税務署から尋ねられて、記憶だけで説明するのは困難です。

軽貨物には追い風があります。2025年4月から義務化された業務記録(運転日報)に走行距離を書いておけば、按分の根拠がそのまま手に入るのです(義務化の詳細は解説記事へ)。義務への対応と経費の根拠づくりが一石二鳥になります。

経費に「ならない」もの — 間違えやすい順

① 交通違反の反則金・罰金

配送中の駐車違反やスピード違反の反則金・罰金は、必要経費になりません。No.2210に「罰金、科料および過料など」は必要経費にならないと明記されています。「仕事中の違反だから業務上の費用では?」と考えたくなりますが、罰則としてのお金は経費に入れられない決まりです。

② 所得税・住民税

自分の所得税・住民税も必要経費になりません(同No.2210)。一方、事業用車の軽自動車税・自動車重量税は租税公課として経費になり得ます。「税金」で一括りにせず、事業にかかる税か、自分の所得にかかる税かで区別します。

③ 国民年金・国民健康保険 — 経費ではなく「社会保険料控除」

ここが一番の誤解ポイントです。国民年金・国民健康保険の保険料は事業の必要経費ではありませんが、社会保険料控除として、その年に実際に支払った金額の全額を所得から差し引けます(タックスアンサーNo.1130・令和7年4月1日現在法令等・確認日2026-07-12)。収支内訳書(経費)ではなく確定申告書の所得控除の欄に書く——記入場所が違うだけで、損はしません。生計を一にする家族の分を自分が支払った場合も、支払った人の控除にできます。

④ 自分の食事代・生活費

仕事の日の昼食代は「働くために食べているのだから経費では?」と思いたくなりますが、食事は仕事をしてもしなくても必要なもので、原則として家事費(プライベート支出)と考えられます。判断に迷う支出の代表格なので、経費に入れたい事情がある場合は自分で判断せず税務署に確認してください。

経費の主張は記録がすべて — 残し方の基本

「あとでまとめて」と財布に溜めるのがレシート紛失の最大原因です。車内にジッパー袋を1枚置き、その日のうちに放り込む——仕組みはこれだけで十分機能します。

日々の経費記録を30秒にするなら

経費の考え方がわかっても、記録が続かなければ申告前に地獄を見ます。毎日の記録を仕組み化しましょう。

よくある質問

Q1. 経費は収入の何%まで大丈夫ですか?

「何%まで」という決まりはありません。基準は割合ではなく、その支出が仕事のために必要だったと説明できるかどうかです(No.2210)。

Q2. 開業前に買った台車や作業着は経費にできますか?

開業準備のための支出は「開業費」等として扱える場合がありますが、範囲や処理方法の判断が分かれやすい領域です。レシートを保存したうえで、税務署の記帳指導や相談会で確認するのが確実です。

Q3. 家族に配達を手伝ってもらった謝礼は経費にできますか?

生計を一にする家族への支払いは、原則として必要経費になりません(No.2210)。青色申告者には「青色事業専従者給与」という例外制度がありますが、事前届出などの要件があるため、始める前に税務署に相談してください。

Q4. レシートはいつまで保存すればいいですか?

帳簿・書類には法律上の保存期間があり、帳簿は原則7年、領収書等は5年とされています(タックスアンサーNo.2070・No.2080)。細かく覚えるのが面倒なら「申告が終わっても全部7年間置いておく」と決めてしまうのが実務的です。

まとめ

出典(一次情報・すべて2026年7月12日確認)

本記事は上記の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務相談・税務代理ではありません。個々の支出が必要経費に当たるかどうかは事実関係により判断が分かれるため、最終判断は必ず税務署・税理士にご確認ください。制度は変更される可能性があります。

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